ジャンプ+発の衝撃作がアニメ化。かわいさの裏に潜む“原罪”とは。
かわいいだけじゃない。観る覚悟が必要な作品
2025年夏、深夜枠で放送された『タコピーの原罪』は、見た目のポップさとは裏腹に、観る者の心を深くえぐる作品だった。ハッピー星からやってきた宇宙人・タコピーが、地球で出会った少女・しずかの笑顔を取り戻そうとする――そんな導入だけ聞けば、ほのぼのとしたSFコメディを想像するかもしれない。
だが、実際に描かれているのは、子どもたちの世界に潜む残酷さ、そして“善意”が引き起こす取り返しのつかない悲劇だ。
タコピーとしずか──すれ違う優しさと現実
タコピーは、ハッピー道具という不思議なアイテムを使って、しずかのために奔走する。だが、しずかの抱える現実は、タコピーの想像を遥かに超えていた。いじめ、家庭の崩壊、孤独。彼女の周囲には、子どもが背負うにはあまりにも重いものがある。
タコピーはそれを理解できない。けれど、理解できないまま、彼なりに“助けよう”とする。その純粋さが、時に残酷な結果を生む。物語は、誰かが救われるわけでも、問題が解決するわけでもない。ただ、静かに、確実に、何かが壊れていく。
アニメ化による表現の深化
原作は、うめざわしゅんによる全2巻の短編。ジャンプ+で連載されていた当時から「読後感が重すぎる」「でも目が離せない」と話題になっていた。アニメ化にあたっては、全6話という構成で、原作の展開をほぼ忠実に再現。だが、映像と音が加わることで、その衝撃はさらに深くなった。
タコピーの声を演じる間宮くるみは、無邪気さと悲しみの混ざった複雑な感情を見事に表現。しずか役の上田麗奈も、言葉にならない苦しみを静かな演技で伝えてくる。セリフの少ない場面では、息遣いや沈黙の“間”が感情を語る。
演出は過剰にならず、むしろ抑制されたトーンが印象的だ。明るい色彩の中に、どこか冷たい空気が漂っている。BGMも控えめで、沈黙の時間が多く取られている。その“余白”が、観る者の想像を刺激し、感情を揺さぶる。
SNSの反響と再評価
放送後、SNSでは「涙が止まらなかった」「こんな作品があることを知れてよかった」といった声が多く見られた。特に、ABEMAでの全話無料一挙放送が実施された2025年8月には、再び話題が再燃。考察動画や感想ツイートが急増し、「タコピー」という名前がトレンド入りするほどだった。
一方で、「観るのに覚悟がいる」「2度目は観られないかもしれない」といった声も少なくない。それだけ、作品が観る者に強い感情を残すということだ。
まとめ:これは“観る”というより“受け止める”作品
『タコピーの原罪』は、何かを解決する物語ではない。誰かが救われるわけでもない。でも、観たあとに残るのは、確かに“何かを考えた”という感覚だ。子どもたちの世界にある残酷さ、無垢な善意が生む悲劇、そしてそれでも誰かを思う気持ち――そういったものが、静かに胸に残る。
まだ観ていない人には、ぜひ時間を取って、静かな環境で観てみてほしい。 この作品は、ただ“観る”だけではなく、“受け止める”ものだから。
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